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概要

news_no.99

2019年(令和元年)10月15日 一般社団法人 全国病児保育協議会ニュース 第99号(5) 愛着形成は病児保育協議会においても極めて関心の高いテーマである。それを反映してか、鈴木廣子先生の特別講演2には多くの参加があった。愛着理論はボウルヴィによって確立され、エインスワースがそれを更に発展させた。ボウルヴィは子どもが母親から離れ不安になったとき、母親に接着する児の行動をアタッチメントと呼んだ。その理論が日本に導入されたとき「愛着」と訳されたため、往々にしてそれは情緒的な結びつきとして解釈される。しかしボウルヴィのいうアタッチメントには元来情緒的な意味合いはなかったのである。もっともボウルヴィにしても後にはアタッチメントに情緒的な結びつきを認めている。 さて、鈴木先生の講演では「愛着」に関する最新の脳科学的な知見も紹介された。すなわち「愛着」は「安全である」と感じられることによって形成される。その安全であるかどうかの判断には聴覚刺激が重要であり、その記憶は右脳に潜在記憶として保持される。そしてPTSDでは聴覚刺激がトリガーとなって潜在意識 「改めて愛着を考えてみましょう」を拝聴して報告者/座長:松原  徹(城東こどもクリニック 病児保育室ことりの森)が呼び起こされ、様々な身体症状が現れる。「愛着」はその「人」を産んだ「母親(養育者)」との関わりの中で形成され、その「人」が持つ「安心感」の基本となり、生涯を通じて他者との関係性の基礎となる。すなわち「愛着」は「人」の心の根幹なのである。 病児保育室「ことりの森」で朝夕繰り広げられる母親(養育者)との分離と再会の時の児の反応の観察で、エインスワースのストレンジ・シチュエーション・テストのように、その子の愛着のタイプを知れるように考えている。母親を送り出すとき、子どもが号泣するのを見ると「これはマルトリートメントなのだろう」と思う。我々はそれが深い心の傷とならないようケアしなければならない。子どもの成長過程は波風のない穏やかな日々ばかりではない。様々な障壁を乗り越えて、子ども達は更に成長する。お母さんを「自分は頑張ったよ」ととびきりの笑顔でお迎えできるよう我々はケアしたいものである。鈴木先生の講演を拝聴し、強くそう思った。特 別 講 演 2子ども食堂からできる~誰もが安心して暮らせる地域や未来づくりの実現~山屋 理恵 先生(NPO法人 インクルいわて) 日本のひとり親世帯の子どもの貧困率の高さ、苦しさはOECD加盟国の中でワースト1である。後6年で我が国では単身者世帯が最大の世帯類型になり、5年後には全世帯の1/3が単身者世帯になるそうです。また、その5年後には子育て世帯の3世帯に1世帯が一人親世帯になり、同時に全人口の半数が独身者になるそうです。未来の社会は、単身者や孤独生活が標準になり、人生が長期化していくに従い益々生きにくい社会になりそうです。そういう社会で誰もが孤立しないで、生き生きと暮らして行ける包摂された社会の実現に向けての一つの仕組みが「子ども食堂」だとお話されました。子どもの貧困と子ども家庭福祉櫻  幸恵 先生(岩手県立大学 社会福祉学部) 日本の子どもの貧困率、ひとり親世帯の貧困率はOECDの中での極めて高い。貧困に関して、家庭に全責任を負わせることなく、貧困の背景にある社会全体の課題としてとらえることが重要である。同時に、子どもの支援と親支援・親の子育て支援を併せて行う「子ども家庭福祉」の視座が必要。盛岡の調査では0-6歳の子どもをもつ母親は子どもの様々な問題に関して身近にいる保育士たちを信頼しており、今後保育園が子どもの貧困対策のプラットホームとして社会資源と家庭を繋ぐネットワークを担えるようになると、親子にとり有用だし、地域の子育て機能を強化することにつながるだろうと、お話されました。報告者/座長:田中 佳博 (さわうち協立診療所 病児保育所キッズルームにしわが)様変わりする子育て環境シンポジウム 1